心 ―ハジマリノウタ―
いや、と首を振って
考え直す。
それだと、わざわざユアを
裏切り者に仕立てる必要はない。
ジグは馬鹿じゃない。
恐らく、あたしが疑っている事にも
気がついているはずだ。
それなのに、あたしたちの前で、
あんな風に自分が敵である事を
暴露する必要は無い。
いくら、あたしに愛想がなくて、
人付き合いを好まなくても、
あたし達のバックには、
議会でも力を持つ、ネヴァ・ライン、
そして、キースがいるのだ。
そのバックには、更にダイガもいる。
そんな危険をおかしてまで、
ユアを裏切り者にし、
居場所を失くす必要が、ジグにはあった。
それが、何なのか。
見当もつかなかった。
ジグの本当の狙いが分からない。
ハアと、唇を割るように
飛び出るため息が、部屋に響いた。
顔にかかる髪をグイと掻き揚げて、
もう一度冷静に考え直す。
まず、ユアとロックを救うために
必要な事を考えよう。
ユアは、フェイクの監視下に
置かれているだろう。
だから、ハートを持つ者の居所を
掴むことが一番だ。
ロックは、手がかりが少なすぎる。
気は進まないが、ダイガに頼んで、
襲われた能力者たちの一部の
検査結果を手に入れてもらおう。