心 ―ハジマリノウタ―
目も当てられないような慌てぶりに
眉を潜めるが、
イラつきそうになる声をどうにか抑える。
頼みごとがあってきたんだから、
そんな態度をとるわけにはいかない。
「頼みごとがあってきました」
「何でしょう?
何なりと、お申し付けください」
まるで奴隷のような口ぶりに、
不快感を覚える。
なんだって、この男は
こんなにも緩んだ顔をしてるわけ?
「ついこの間、ロックと能力者たちが
カーザス湾へ向かい、
奇襲にあったことはご存知ですよね」
ダイガは頷いた。
それはそうだろう。
あれは、議会で決められた事なのだ。
当然ダイガも認証したに違いない。
「ロック以外の能力者が送り返されたことは?」
「ええ、報告が来ています。
それが、何か?
引っかかる事でもありますか」
…報告?
報告だけではないはずだ。
ジグは南西と北に運送して
調べてみる、と言っていた。
「報告以外、来てないのでしょうか?
例えば、能力者たちの血のサンプルだとか、
その一部だとか…」
あたしの言葉に、
ダイガは顔をゆがめながら笑った。
「随分物騒な事を言うんですね。
そんなモノは届いてないな。
非常に重症だったという報告が来て、
ロックの代わりを決める議会を開いただけだ」