心 ―ハジマリノウタ―
おかしい。
眉を潜めて、考える。
ジグは、あのグロテスクな残骸を
ダイガに送らなかったのだ。
ダイガに送っていないなら、
サリーンにも届いていない事だろう。
何故?
調べられるとまずい、何かがあるから?
自分と繋がる証拠があるから?
でも、ジグがあの場所に行くのには、
5日はかかるはずだ。
瞬間移動でもできるなら別だが…。
いや、ハートを持つ者なら、
それも可能?
でも、あの時…
新種のドレイの血に毒された能力者たちが
帰って来て、ユアが治療に当たった時、
ジグは本気でユアを心配しているように見えた。
あんなジグは初めて見た。
ジグは冷静沈着、
どんな時でも、あの淡い灰色の瞳で
物事を見極めるヤツだ。
時々、そこに感情は、心はあるのかと、
疑ってしまうほどに。
そんなジグが、ユアが倒れた時、
慌てふためいて、治療班を怒鳴りつけていた。
それに、能力者が回復した時も、
本気で感謝しているように見えた。
何時ものジグとは違う印象を抱いたのは、
確かだった。
あの時のジグは、全ての行動が人間らしかった。