心 ―ハジマリノウタ―
「分かった。
でも、傷はちゃんと治すんだよ」
あたしの言葉に頷いたリオは、
困ったように笑って言った。
「こんなこと、もう言わなくても
いいのかもしれないけど…
メイをよろしくお願いします。
僕は暫く一緒に
行動できなくなると思うから」
本当の用件はこっちだろう。
メイはこの様子だと
リオの決断を受け入れたのだ。
メイはあたしの目から見ても、
強くなった。
力強く頷くと、ホッとしたように
リオは目尻を下げた。
「ありがとう。
なるべく早く戻ってくるから」
まるで遠くに行ってしまうような、
挨拶だった。
リオは、それじゃあ、おやすみ。と
部屋を出て行った。
離れていくわけではない。
壊れていくわけではない。
それなのに、彼らの居た日常が、
どんどん消えて行く気がした。