心 ―ハジマリノウタ―
Darkness Erodes
「ユア、起きなさい!
そろそろ時間よ」
優しく頭を撫でていた手が、
少し強く私の肩を揺すった。
目を開けて、身体を起こすと
見覚えのない部屋が広がっていた。
そうか、昨日はあの後、
カトレアの部屋で疲れきって寝てしまったのだ。
瞼が重かったが、
カトレアが急かすままにバスルームへ向かう。
大きな鏡の前に座って、
そっと優しくカトレアが私の髪を梳く。
そういえば、前にもこんな風に
誰かと鏡越しに向かい合った事があった。
…ロックだ。
彼は今、どうしているのだろうか?
あの、新種のドレイはまたどこかに出没しているのだろうか?
私にはもう、救う術がないけれど、
他に何か方法が見つかるといい。
そうしたら、もうあんな残酷な情景は
なくなるのだから。
ロックが無事で、生きていて
またリヴィアと会えますように。
もう私は一緒に探す事も、
何も手を貸すことはできないのだ。
それに、早く忘れなければならない。
だから、今は。
忘れる前に、祈るだけでも…。