心 ―ハジマリノウタ―
「はい、できたわよ!
まあ、我が子ながら何て可愛いんでしょうね」
ふふっと笑って、
カトレアは照れたように笑った。
鏡を見ると、鏡の中の少女は、
少し不安そうに眉を下げながら、
こちらを見つめ返していた。
髪型は何時の間にか、
高い位置に一つに結わえられていた。
「ありがとう、ございます」
「いいのよ!
実はね、ずっと夢だったの。
こんな風に娘の髪の毛を結んであげること。
ちょこっとだけお化粧もしてみたから、
きっと、フェイクは腰を抜かすわね」
悪戯っぽく笑うと、
カトレアは立ち上がって言った。
「それじゃあ、ユア。
服を着替えるのよ。
そうしたら、出発するわ」
そう言うと、彼女はバスルームを出て行った。
洗面台の上には、服がおいてあるようだ。
紅の光沢が鈍く輝く、
ハートを持つ者の任務服だった。
私は、それを手に取った。
これで、もう…
本当に後戻りは出来ない。
それでいい。
これでいい。
私が選んだ道だ。
彼らのために、私のために。
私は服を脱ぎ捨てた。