心 ―ハジマリノウタ―




私の様子を見て、ジグは悲しげに

眉を寄せて首を振った。


こんなジグを見るのは初めてだった。




「…まあ、よい。

お前が初めてアジトに連れて来られた時、

リオがお前に何と言ったか、

覚えているか?」




忘れるわけがない。


彼らとの記憶、忘れようとすればするほどに

脳に焼き付いているかのように

鮮明に蘇るのだ。


しかし、私は頷かなかった。


私は、もう敵なのだから。




「リオはな、心の感ずるままに、

と言ったんだ。

あの時はそれができずとも、

今は、今のお前にはそれができるのだ。

心の感ずるままに、

選択するんだぞ」




ジグは私の肩を叩くと、

輪の中の闇を目で示した。


私は再び頷くと、

その中へ足を踏み入れた。


最後に見た、ジグの顔は、

寂しげに微笑んでいた。


その表情は、カトレアのそれに

とてもよく似ていた。



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