心 ―ハジマリノウタ―



中に入ると、カトレアとフェイクの姿があった。


2人とも、私を待っていてくれたようだ。




「遅くなって、すみません」



「いいのよ。

ジグに何か言われてたんでしょう?

それじゃあ、行きましょうか」




カトレアはにっこり笑って、

歩き始めた。


フェイクは何も言わずに、

私を一瞥すると、カトレアに続いた。


フェイクは私たちが朝部屋に迎えにいった時も

同じように何も言わなかった。


ただ、目を丸くしてそっぽを向いただけ。


それをみて、

カトレアは涙が出るほど笑っていたけれど。


私にはその意味が良く分からなかった。


しかし、依然と変わらないのは、

彼が私を拒み続けている事だった。


私は目の前のフェイクの背中から目を離して、

その不思議な通路の景色を見つめた。


その世界は赤黒かった。


狭い通路かと思いきや、

広がる世界は広い。


空も高く、黒い背景に赤い月が昇り、

世界をその色で染めていた。


私たちが歩く道は整えられていたが、

久しぶりの土の感触だった。


しかし、それさえも、道端に咲く花さえも、

みな月光を受けて赤く光る。


何だか、この世界は、

私には居心地が悪かった。


心の中の、何かが知らず知らずのうちに、

疼くかのように…。



< 483 / 534 >

この作品をシェア

pagetop