心 ―ハジマリノウタ―
中に入ると、カトレアとフェイクの姿があった。
2人とも、私を待っていてくれたようだ。
「遅くなって、すみません」
「いいのよ。
ジグに何か言われてたんでしょう?
それじゃあ、行きましょうか」
カトレアはにっこり笑って、
歩き始めた。
フェイクは何も言わずに、
私を一瞥すると、カトレアに続いた。
フェイクは私たちが朝部屋に迎えにいった時も
同じように何も言わなかった。
ただ、目を丸くしてそっぽを向いただけ。
それをみて、
カトレアは涙が出るほど笑っていたけれど。
私にはその意味が良く分からなかった。
しかし、依然と変わらないのは、
彼が私を拒み続けている事だった。
私は目の前のフェイクの背中から目を離して、
その不思議な通路の景色を見つめた。
その世界は赤黒かった。
狭い通路かと思いきや、
広がる世界は広い。
空も高く、黒い背景に赤い月が昇り、
世界をその色で染めていた。
私たちが歩く道は整えられていたが、
久しぶりの土の感触だった。
しかし、それさえも、道端に咲く花さえも、
みな月光を受けて赤く光る。
何だか、この世界は、
私には居心地が悪かった。
心の中の、何かが知らず知らずのうちに、
疼くかのように…。