心 ―ハジマリノウタ―
第十一章
Loving it
≪Fake≫
俺は彼女のために何が出来る?
彼女に信じてもらうために、
何をすればいい?
思い出すんだ。
ユアは俺に何をしてくれた?
大切な者を捨てて俺を選んでくれた。
だったら、俺は何を捨てればいい?
ユア、君は俺が何を捨てたら、
俺を信じてくれるの?
俺にはユアの気持ちがよく分かる。
あの時、ユアの手を振り払った時の俺と同じ。
信じたいのに、信じられない。
心のどこかで疑って、それが広がっていく。
黒いインクが、紙に染みをつくるように…。
俺は、彼女のために何ができる?
待つ?抱きしめる?
本当にそれだけだろうか。
俺は今まで、自分の気持ちばかり優先させてきた。
ユアの前にこの館へ連れた着た女も、
俺が一緒に居たいから、
騙してまでも、攫ったんだ。
ユアも、そう。
本当は分かっていた。
ユアの心の中には、あいつ等が居る事も、
本当は一緒に居たいと、願っている事も。
それでも、俺はユアを独り占めしたくて、
無理矢理選択させた。
ユアを奪われたくない。
イレだって、もちろん大切だった。
でも、ユアは俺にとって、一番大切な人なんだ。
だって、ユアは…
ありのままの、俺を受け入れてくれたから。
だから、俺は、ユアのために何だってしたい。
もう、今までの俺とは違うんだ。