心 ―ハジマリノウタ―




「ユアを、返す」




やっと一言、俺の口から零れ落ちた。


それだけで、

俺の知っている彼女が全て

手から零れ落ちていく。


初めて見せた微笑みも、

俺の涙をすくった、細い指も

硬い表情も

俺にかけた全ての言葉も…


全部だ。




「それは、何故?」




ゆっくりと、リヴィアが聞き返す。


その口調が優しく感じるのは 何故だ?




「ユアの心には、心の闇が巣食ってる。

俺には、彼女を救う事はできない。

だけど、お前らなら、

ユアを救うことができるかもしれない。

ユアは、あのままで居られる」




そう、あのままのユアで。


俺の大切な、彼女のままで。



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