心 ―ハジマリノウタ―



「おい!心の闇って、どういうことだ?!

ユアのままで居られるって何のことだよっ」




リオンと、くすんだ金髪の少年が

一斉に喚き始めた。


俺も、一緒になって喚きたいくらいだった。


本当はユアを返したくない。


このまま帰って、

俺だけをユアに見つめていてほしい。


だけど、それはユアを失う事と同じ。


だから、俺はここにいる。




「きちんと説明してもらいたいね。

このままじゃ、何もわからない」




金髪を苛立たしげにすくと

リヴィアは俺をじっと見た。


エメラルド色の美しい瞳は

俺の全て見通しているようにも見えた。




「心をイレに奪われていたことが

関係しているらしい。

一度心を奪われて、他人のものになれば、

その心が持ち主に帰った後も、

心に闇が、ユアの場合はイレの人格が残って、

心を蝕んでいく。

完全に蝕まれれば、

ユアの人格は、消えてしまうんだ。

それを止める方法は、プラスの想い、

つまり喜びとか、愛とか、

そういうモノに囲まれていること…」



茶髪の少女が鋭い目で俺を見た。


キラリと耳に下がったピアスが光る。




「アンタは、ユアを愛していないわけ?

あの女の人は?」




彼女の愛に嘘はないし、

俺の愛にも、嘘はない。


でも恐らく、それだけじゃ…



「それだけじゃ、足りないってことか。

だから、あたし達にユアを返す…と?」




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