心 ―ハジマリノウタ―
フェイクの優しい言葉に
闇がスッと晴れていく気がした。
でも、私が居なくなれば、
フェイクは独りになる。
この広い部屋に取り残されてしまう。
私は本当にそれでいいのだろうか?
「俺のことは心配しないで。
俺はユアがユアで居てくれれば、
それでいいんだ。
たとえ、側に居なかったとしても」
優しく微笑む彼の赤い瞳に
私が映っているのが見えた。
私は…。
フェイクを信じよう。
フェイクと一緒に居ようと、
そう決めた。
それなら、それを貫けばいいのだ。
私は手に添えられた大きな
優しい手をと握り返した。
そんなはずないのに、暖かく感じるのは、
彼が暖かい心を持っているからだろう。
「ありがとうございます。
リヴィアたちのもとへ
連れて行ってください。
そこで、決めます」
フェイクの瞳にほんの少しだけ、
悲しみが揺らめいた。
けれど、すぐに笑顔を取り戻して、
言った。
「ああ、行こう!
きっと皆待ってるよ」
私の手を引いて、暗い月の世界へ誘う。
もう、この場所も怖くない。
私には、彼らがついているのだから。