心 ―ハジマリノウタ―
やがて、ある階に着くと
鈴がリン。と鳴り、
見張り番と私は長い廊下に出る。
歩き出したかと思うと、
見張り番は私の腕を強く引き、
側にある扉の中に押し入れた。
「こいつを洗い、ドレスを着せろ。
主様がお待ちだ!」
どうやら私に向けられた言葉では無いようだ。
扉が閉まったことを見届け、
向きを変えると再び強い力に腕を引かれ、
水をかぶせられた。
水でぼやけた視界から、
薄暗い部屋の光を受けて鈍い肌色に光る、
創られた皮膚が見えた。
伸びてくる腕は冷たく、容赦を知らない。
ドレイの腕、だ。
しばらくすると、
泡に包まれていた私に再び水を浴びせ、
ごわごわしたタオルでしっかりと水をふき取り、
ドレイ達はせっせとドレスを着せ始めた。
深い蒼に白のレースがついた
簡単だが美しいドレスと
それに不似合いな革のサンダル。
その不協和音のような違和感も、私には関係ない。
ドレスを着せられたところで、私には何も感じない。
嫌ではない。
だが、嬉しくも無い。
背中の紐を通し終わったドレイが
ドアの外へ私を押し出す。
私は抵抗すること無く、見張り番の元へと戻った。