心 ―ハジマリノウタ―
第三章
Old Wound Still Aches
《LIVIA》
「何の用かな、リヴィア」
平淡な冷たい声があたしの名を呼んだ。
あたしは、頷いて用件を言う。
「何故、あの子を
あたしのところへ寄越したんだい?」
「ユアのことか?
あれは、ロックが決めたことだ」
あたしは唇を噛んだ。
あたしが言いたいことは
分かっているはずなのに、
しらばっくれているジグに腹が立つ。
「ジグ!
あたしは、まだ…」
「アトネスのことが
忘れられないとでも?」
いきなり突きつけられた、
その名に言葉がでなくなる。
右目の傷が疼く。
それはまるで、心の傷を抉(えぐ)るよう。
「もう忘れろ、と言ったのを
忘れたのか。
あれは、不運な事故だ」
そう、事故。
あたしのせいで起きた、不運な事故だ。