心 ―ハジマリノウタ―
◇◆◇
あたしとユアは訓練所に居た。
ユアは、全く戦いを知らず、
剣の握り方から
指導しなければならなかった。
ことが起こったのは、
ユアが剣に慣れ始めた頃だった。
練習していた者たちの一人が、
誤って負傷したのだ。
「ああっ、腕が…」
見ると、酷い怪我だった。
血が傷口からあふれ出す。
ツンと錆の匂いが鼻をつく。
あたしは駆け寄って、止血しようと
練習着を裂く。
周りには人だかりができ、
皆負傷した男を助けようとしていた。
その人の合間に見えたのは、
ただ独り、輪の外にたつユアだった。
その顔に何の表情も浮かべず、
こちらを見つめている。
その目には、まるで何も
映っていないかのように。
漆黒の瞳は、あたしを見つめていたのだ。