心 ―ハジマリノウタ―




何も感じていない目。


男の痛みも、苦しみも、

見えて居ないかのように無情で、

何も映しては居ない。


初めて怖いと思った。


心が無いと言うこと。


その時気がついた。


彼女は、自らの意思で

何もしたことが無いのだ、

ということに。


ここに来た時にした説明も、

リオに命令されてしたもので。


今タオルを持ってきたことも。


あたしたちに、

ドレイの情報を教えたことも。


全て、彼女にとっては命令だから、

という理由で行ったことなのだ。


あたしは、無情なその瞳を見て、

分かった。


工場から解き放たれた今でも、

ユアは奴隷で、

今、あたしを殺せ、と命令されれば、

躊躇無くあたしを殺すだろう、

ということを。




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