心 ―ハジマリノウタ―
「リヴィア?」
老人の声が、あたしを呼び戻す。
その怪我をした男は
無事に治療班によって癒えた。
残ったのは、あたしの嫌悪感と恐怖。
ユアは今、どうしているのだろう?
「お前が、ユアをどういう理由で
嫌っていようと、
私は何もしはしない。
どうしても嫌だというのなら、
ロックに自分で言うことだな」
そう言うと、ジグは目を瞑った。
ロックに、自分で。
そうなれば、きっとアトネスのことも、
この傷のことも、話さなければいけない。
それが、可能なら、とっくに…。
あたしは、唇を噛んで、
部屋から退散した。
「リヴィア」
ジグが、部屋を出る寸前の
あたしに言った。
「ユアを頼むぞ」
返事はできなかった。