World of Game
小夜は目を覚ました。
そこは何もなく、白い壁、床しかなかった。
あの人に話しかけられてからの記憶がない。
それどころか、その人の顔さえ思い出せない。
何もわからない小夜は困惑した。
家に帰らなきゃ……
パニックになりすぎると、逆に冷静になりその思いだけが浮かんだ。
状況がわかっていないのか、一人なのが平気なのかわからなかったが、不思議と怖いとは感じることのない空間だった。
「目が覚めたかい?」
見知らぬ男が入ってきた。
優しそうな瞳、清潔で整えられたスーツどこにでもいそうな大人といった印象だ。
「だれ?」
「名前は言えないな。君のお名前は?」
「―――」
声が出なかった。
言おうとするのに出てこない。
まるで自分の名前を忘れてしまったかのように。
「言えないんだね。
じゃあ、僕が決めてあげよう。君は№1073だ」
「№1073…」
「そう、忘れないようにするんだよ?」
「うん!!!」
お母さんに知らない人についていったりしないようにと言い聞かされていたことさえも忘れていた。
何かがおかしかった。
小夜は機械のようにすべてうけいれていた。