World of Game
「名前だよ、な・ま・え!」

「…№1073」

答えると男の子はため息をついた。

「番号じゃない、名前だって言ってんだろ」

「だって! これがあたしの名前ってあの人が!」

「ああ、なるほどな」


何がなるほど? 全くわからないよ…

「俺は弥生 惇(やよい あつし)、№841だ。この研究室へようこそ」


男の子、いや弥生が不敵な笑みを浮かべながら言った。


「お前、現状がわかってないみたいだな」

「現状って何?」


弥生に対しての不信感が募っていてつい言葉がとげとげしくなる。


「俺たちはいろんな場所から集められてここで勉強及び仕事をさせられる。しかし、ほとんどの奴は気付いてはいない」

「気付くって何に?」


フッと笑うと弥生は奥にいって何かを持ってきた。
ビー玉よりも一回り小さい、真っ赤な果実だった。

「これ、食べてみろ」

「嫌」

小夜は即座に断わっていた。
本人にもわからないほど体がこの果物を嫌がっていた。


「大丈夫だ、体には無害だ」

「体にはって? 他に何かあるの?」

「何も」

「……」

小夜はまだ弥生を信じきれないでいた。

「いいから、騙されたと思って食べてみろって」


弥生はすでに不機嫌そうな顔をしていて、小夜は初日に先輩に逆らうのはやめておこうと思い、渋々ながらも赤い実を口に入れた。



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