World of Game
いざ研究室の前にたどり着くと今まで無いほどに緊張していることを握り締めた拳にまとわりつく手汗が告げていた。

一旦手洗いによって手を洗い、綺麗に拭いてから手のひらに『人』の字を書き、いつもどおりいつもどおり、と呪文のように唱えた。


「お前、何をぶつぶつ言ってんだ? 気色悪い」


「き、気色悪いとは何さ! こちとら緊張して真剣に……て、弥生じゃん」


今更気付いたのか、という言葉を発する気力すらも失うほどに脱力した。

呆れと軽い軽蔑の入り混じったため息を一つつき弥生は改めて小夜を見た。


泣いたのか目元が赤い。それに足も震えている。
……本当に大丈夫なのか?


「お前さ、んなに緊張してると成功するもんもしねーぞ」


腕を組み、見下すかのように言った。


「だ、大丈夫だよ!!」

はぁ、と弥生はまた大きくため息をついた。



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