World of Game

ラスクディルに言われた言葉が小夜の心の淵に引っかかって傷を残して消えた。
その傷から不安の塊がむくむくと広がり、小夜の胸中を支配し始めた。


全員が椅子に着き、小夜と弥生をはじめとする仲間たちが一人ひとりにST-Lunaを配る。


装着し終えて、体を椅子に預ける。

小夜は部屋の端にまとめてある制御装置の元へ行く。
それに気付いた弥生が小走りに近づいてきた。


「何を言われた?」

「大丈夫、何でもないよ。――ただちょっと脅されただけ」

「脅されたっておま――」


小夜の言葉に驚き弥生が抗議の声を上げようとしたが小夜は遮って言った。

「大丈夫だよ! ――だから、心配しないで?」


弥生は小夜を見た。

到底大丈夫と思える表情をしてないから言うんだ。


言葉にしなくても、視線だけで充分伝わってきた。
けれど小夜はそれを無視して言った。

「最後の準備だよ、早く終わらせよ!」


――そして時は訪れる。


「では、始めます。落ち着いて座っていてください。指示は端末を通して行います」

本来スイッチがあるが、今回はお披露目会ということ、小夜を逃がすという目的もあり起動は小夜たち側で行う。


端末の目の辺りを走るラインが、赤く光る。

起動が始まった証拠だ。
制御装置のディスプレイにプレイヤーたちの脳波が波打つ様子が映し出される。


「まもなく催眠状態に入る。いいか?」


弥生がスイッチを持った一人に声をかける。

脳波が安定してきたところで小さなピッという音を立ててスイッチが押された。
と、同時に椅子の手すりや足から出た枷でラスクディルや幹部達の手足を拘束した。



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