World of Game

喪失

倒れた子によって扉が閉じなくなってしまった。

まだ温かく出血しているそれを動かすことの出来るほどの勇気を持つものはいなかった。


彼らはその子を打ったものを警戒しながらエレベータを降りた。

隣にあるエレベータの表示を見るとラスクディルの計らいだろう、すべて使えなくなっている。


小夜たちは通路を走る。

打ったものの正体はわからなかったが、一応何もしてこないことを確認しながら行く。

誰とも無く小夜は前を走る弥生達に聞いた。


「ねぇ…、もしかしてさっきからいない子もああやって――」


次の言葉を出すのに少し躊躇った。
この言葉は、まだ重過ぎる。


けれど――


「ああそうさ。死んじまったよ」

弥生が言った。
その言葉に小夜の瞳が揺れる。

「私の所為で――」

「違います!」


一番前を走る子が言う。

「此れは僕らが選んだんです! いつ意識がなくなるかもわからない状況の中で、自分が役に立てることをあなたはもたらしてくれた!
体は死んでないかも知れないけど、そんなの死んでるのと同じなんですよ!」


その子の声に周りも口々に賛同した。

「そうだ!」

「希望ができた、それに携われることが喜びなんだ!」

「あんたは此処の世界を変えられるかもしれないだから――」

「それじゃダメなんだよ!!」


小夜は立ち止まった。


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