World of Game
友と家族と
小夜は、顔を洗ってくると言って席を立った。
此処は槙のカフェ。
謎の手紙の騒動の翌日、小夜たちの学校は午前中で終了する。
槙は午後から店を臨時休業して小夜の話を聞いていた。
「…………」
しばらく、四人に言葉は無かった。
いや、言葉を発することが出来なかったというほうが的確か。
はっきり言って小夜がさらわれた経緯
その場で起こった事
ミスキア
ST-Luna
逃走劇までの全てを聞いたが、とても信じられるような話では無かった。
皆、昨日の騒動が無ければ夢物語だと笑い飛ばしていただろう。
しかし、話しているときの小夜の表情から見ても嘘をついているようには見えなかった。
何より、小夜がさらわれてから1年間行方不明だったことは変えられぬ事実なのだ。
沈黙を破ったのは緋翆だった。
「佐山さん、アンタはこの話知ってたのか?」
槙は懐かしむような遠い目をして言った。
「ああ。小夜が見つかって少しした頃にざっとはな。
けど、小夜も今ほど説明力があったわけじゃないから、ちゃんと聞いたのは此れが初めてさ」
「そういえば、槙さんは昔から小夜と知り合いだったの?」
早苗が飲み物の終わったグラスの氷をストローでカラコロと音を立てながら聞いた。
「ああ、そうだ。小夜は俺のはとこにあたるんで、昔から遊んでやったりしたな。
小夜の誘拐事件とかがあった頃、俺は高校生で近くに住んでた上に小夜の両親に援助してもらってたんだ」
ほぉーと早苗と由宇児は同時に息をついた。
緋翆は相変わらずの仏頂面でいる。
二人がもっと小夜の昔の話を聞こうと身を乗り出したとき、小夜が戻ってきた。