World of Game

全てを吐露した安心感の所為もあったのだろう。
一気に緩くなった涙腺はなかなか涙を止めてはくれなかった。


そんな小夜を落ち着かせるためにも三人は帰ることにした。

小夜は泣き笑いの顔で見送り、三人が背を向けて歩き出そうとしたときだった。


三人が帰ろうとした逆の方から、あわただしい足音と共に、空気を一変させる声が響いた。


「遅くなっちゃってゴメンね〜、槙君。速い電車逃しちゃってさぁ……ってあれ、緋翆?」


トランクを転がしながら来たのは、髪を金髪に染めた女性。
名前を呼ばれて振り返った緋翆は目を丸くした。

「! 碧(みどり)姉、何で此処に?」

「「「碧姉?」」」


小夜、早苗、槙はオウム返しに聞いた。


「緋翆は私の弟よ。そっか槙君のとこの小夜ちゃんと同級生だったんだ! どうも小夜ちゃん、私は絢杉 碧。
よろしくね。弟がいつもお世話になってます。」

明るい笑顔を携えながら右手を差し出す。
小夜もおずおずと手を差し出し、碧はその手をつかんで大きく振るように握手しながら、早苗と由宇児に目をむける。


「早苗ちゃんも由宇児も久しぶりね!」

早苗も由宇児も「お久しぶりです」と頭を下げる。

由宇児は幼い頃から緋翆と遊んでいたため、早苗は中学に緋翆、由宇児と知り合ってからの頃から碧とは顔見知りだった。


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