World of Game

碧が子供たちと和やかにしているのを、槙は気まずそうに見つめた。

「あんさ、碧さん」

「何?」

「今日さ、ちょっと外せない用事があったもんで店、臨時に休みにしたんですよ」


ガタン、と大きな音を立てて碧のトランクが落ちた。
トランクだけでなく、持っていた手荷物全ても。

「ウッソ!? じゃあ私が頑張ってきた意味ない!?」

「まぁ、待ってくれって。この時間なら大急ぎで仕込みすれば夜の分に間に合わない事もない」


碧の瞳がイタズラにキラッと光った。


「と、いうことは?」

槙は碧の手を取る。

「料理に、酒に、店内の配置移動……忙しくなる。手伝ってください。小夜もだ」

小夜は頷き、三人に挨拶して店の中に戻っていった。

「碧さん、早く上で着替えて手伝ってくれ。開店時間は出来るだけ遅らせないように」

小夜に続き槙も店へと戻った。
碧は落とした荷物を拾いながらぼやいた。

「はぁ…長旅の後にすぐ労働……。ツイてないわ」

緋翆はため息をつく姉を見下ろして二人と共に帰ろうと歩き出した。

「ま、頑張れよ」

「待ちなさい、緋翆」

「んだよ──!?」

振り向いた緋翆の目に入ったのは、実際には見えないが、後ろに大きくドス黒いオーラを携えた碧。
実の姉とはいえそんな形相で見つめられたら緋翆でも腹の底から震えた。

「こうなったらアンタも手伝いなさい」

「はぁ!?」

問答無用。
碧ははっしと緋翆の襟首を掴んで引きずって行く。
本気で抵抗すれば逃げられないことも無いのだろうが、姉のオーラがそれをさせない。


言葉の抵抗だけで、店の中へと消えた。


そうして取り残された二人は、顔を見合わせ、平和に家路を辿った。


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