【いつきの小説講座】巻ノ弐



 彼って超クール!

 例えばね、この前ね、部活帰りに駅前通りの喫茶店にいったのね。

 そしたらさ、オープンテラスにひとりでいるの!

 文庫片手に珈琲を飲んでたんだけどさ。

 そこに店員さんが近付いていったのね?

 あ、その店って珈琲のおかわり自由なの。

 でね、その店員さんがカップに手のひらを向けて、

「いかがですか?」

 って声をかけたの。

 そしたら彼、カップを挟んでそれに手をかざして、

「いえ、結構です。ありがとう」

 もうなんていうの?

 お前ホントに同級生かよ!

 みたいな。

 し・か・も!!

 会計のときに店員さんが、

「ありがとうございました」

 っていって礼をしたら、大き過ぎず小さ過ぎずな声で、

「こちらこそ……」

 おっしゃれ~!

 ていうか何あの、

「こちらこそ……」

 って。

 単純に「ごちそうさま」じゃなくて、しかもあえて「ありがとう」でもなくて、

「こちらこそ……」

 しかも微笑むわけでもなければ視線すら合わせないまま、

「こちらこそ……」

 って言葉を“置いていく”みたいな。

 やぁん、もぅ超クール!!



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