君に一番近い場所
「なに?」
黒い瞳を向けながら
あたしへ寄ってくる黒崎。
なんとなく目が反らせない。
なんとなくソレは……
「……」
「……」
黒崎はためらいもなく近づいてきて、ためらいもなく窓に手をつき、あたしを檻に閉じ込めるようにして、唇と唇とをあわせた。
ただそれだけ。
キスをしただけ。
黒崎が窓から手を離して
檻をやめた。
黒崎 と言う名前の檻は
なくなった。
あたしから黒崎が離れる時、
ふわりと香った。
有名なブランドの香水と
苦いタバコの混じった香り。