紫陽花の咲く丘で
「巴、ポイント教えて」

「しょーがねえな、ったく。
普通今からやるか?
日本史なんて覚えることだらけだっつーの。
もう、ホントでる場所しか言わないぞ、
流れなんていちいち教えないからな」

巴は参考書を開いて、ペンで印をつけていく。

「私、いつも思うんだけど、巴ってずるいよね」

雪が、ちゃっかり巴の手元を覗きながら言う。

「あー?」

巴は参考書から目を離さずに、先を促す。

「だって、学校さぼっているのに成績いいし、
でる場所解るし、なんか要領がいいんだかなんだか・・・
ちょっとむかつく」

雪は巴のつけるポイントと同じ場所を、自分の参考書に印をつけている。

「教師のだしたいようなところは、だいたい同じだろうが。」

巴は、顔も上げずに言う。

「なんでそういうのが解るのかってこと!」

「知らなぁい・・・勘?」

巴はやっと顔を上げて、にやっと笑う。
雪はあきれているのか、何も言わない。

「いいじゃない雪。その恩恵にあやかれるんだからさ」

「おいおい、ちっとは自分でやれよ」

「あら、巴がさぼるときのノートは一体誰が書いているのかしら?」

「・・・感謝していますよ」

「わかっていれば、よろしくてよ」

・・・・一瞬の沈黙のあと、私たちの笑い声が教室に響いた。
あー、ホント二人との会話は楽しい☆

「おい、井村達。お前等職員室行かなくていいのかよ」

涙まで浮かべて笑っていた私達に、
クラスの男子が話し掛けてきた。
私達三人がそろって遅刻するときは、
サボりだと皆さんご存知なのよね(苦笑)

「あ、忘れていた」

私達三人は顔を見合わせる。

「どうする?」
「いくしかないだろ」
「いやぁー、お兄ちゃんに怒られるぅ」

私達はお弁当を片付け始める。

「ありがと高橋君」
「別に、それよりがんばれよ」
「あははは、代わりたいんなら代わってあげるよ」
「いや、遠慮しとくわ」

―ピンポンパンポーン―

・・・嫌な予感

―井村・川原・清水、至急職員室まで―

「・・・やっぱり」
「急ごう」

私達は教室をとびだした。


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