紫陽花の咲く丘で
誰が言うともなしにブランコに腰掛ける。
昔、アイツと一緒に遊んだ公園・・・。
この町には思い出がありすぎる。
この公園、この道、少し遠くの小学校や通りの向こうの幼稚園。
すべてがアイツとの思い出に繋がってしまう。
この町で一人になれるスペースを探すのは一苦労だ。

「高校行ってもあんまかわらないんだろうな」

隣で雪がため息をつく。

「なにお前、高校行きたくないの?ダブる気?」

巴がタバコを取り出しながら聞く。

「そうじゃなくて、このまま皆で高校いって、
こうやってサボるのかなって思ったら、
こういうのが腐れ縁なのかなってさっ」

雪がブランコに立ち上って、勢いよく漕ぎ出す。
カチッという音が聞こえ、目を向けると巴がタバコに火を点けた音だった。

「代わりばえのしない毎日に嫌気が差したわけ?」

緩やかに紫煙を吐き出しながら立ち上がり、風下に移る。
巴は、そういう気配りの上手な女性だった。
私は巴に手招きをし、タバコを一本もらい火をも貰う。
巴は苦笑しながらまたブランコに座りなおす。
雪は見逃してくれる気なのか、気づかぬ振りをしている。

「そういうのじゃない・・・と思うけど、
嬉しいのかな?よくわからないや」

漕いでいるブランコから飛び降りて振り向く。
その表情は照れているような、嬉しいような複雑なモノだった。

「つまりは青春ってか。いいねー若人は」
ふざけた口調で、巴が言う。
そして吸っているタバコを携帯用灰皿に捨て、それを私に差し出す。
どうやら終わりにしろと言っているらしい・・・。
今一度大きく吸ってからそれを灰皿に捨てる。
しばらく私達は思い思いに公園内のいたるところで遊んだ。

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