pm13:00
―――…
「七澤総司!頼む!私に勉強を教えてくれ!」
そう言って、クラスメートの安藤すみれが俺の前に土下座してきたのは、今から一週間前の事だ。
「一ヶ月後の期末テストで結果を出したいんだ!」
朝、学校に来た途端に俺の前で床に手をついた安藤を、俺はただ目を丸くして見つめるだけだった。
おそらく周りの奴らも一緒だっただろう。
安藤すみれは、誰ともつるまず必要以上に喋らず、いつももの静かなのにスポーツをすると鬼に変わるという…少し不思議な女子としてクラスでは浮いていた。
長くて艶やかな髪が、喋るたびに揺れて―初めて聞く安藤の凛として透き通った声と、その美しい髪に暫し俺は心を奪われた。
強い意思を感じさせる大きな瞳が、返答を求めてくる。
思いつきは、笑えるくらい単純な思いからだった。
俺が知っている「女子」とは全然違う雰囲気、喋り方。
―こいつのことを、もっと知りたい。
「いいよ。ただ、条件がある。…毎日、俺に弁当を作ってくること」
女らしいこいつの一面が見てみたい。
たった、それだけの。
…それから、昼休み開始時刻の午後一時になると、俺と安藤は屋上に行き、一緒に弁当を食べているのだ。