pm13:00




「…母は、重い病におかされていた。私が小学校に上がるころには、医者からはもう手遅れだと言われていた」


安藤は俯いて、短く息を吐く。
膝の上で組んだ手が震えていた。


「…私は、病と闘う母になにもしてやれなかった。

助けになることも、いい娘であることも。
ただ目の前で、衰弱していく母を見ていることしかできなかった。


…だから、母の死んだあの日、もう決して自分の大切なものを失わないために、今度こそ守りたいものは自分の力で守ってみせると誓ったんだ」


それなのに、と安藤は、きゅっと唇をかみ締めた。


「すべて投げ出してどれだけの努力をしても、超えられない相手がいるんだ。負ければ必ず、お前は女だから、とそう言われることが、悔しくてならないんだ。


言われれば言われるほどに、似合わない、女らしい名前も女である自分自身も、嫌でたまらなくなった。

悔しくて、女だからと言わせないように、ずっと、ずっと、強くなるために努力してきた」



ぎゅっと両目を瞑って、それなのに、と涙を堪えるように、震える声を絞り出した。









「…私は、こんなにも、弱い」









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