pm13:00
「それと、七澤」
安藤はくるりと向き直ると、眉を寄せて俺の眼を真っ直ぐに見つめてきた。
「ずっと気にかかっていたんだが、私の家から帰るとき、なにやらナツメと話していたが……余計なことを言われたんじゃないか?」
「…余計なこと?」
首をかしげて視線を合わせると、安藤は深いため息をついて、ああ、と頷いた。
「あいつは昔から、人をからかうのが趣味のようなヤツでな。この前なんて、ちゃんとした彼女がいるくせに、うちの新しい門下生に、自分は私の彼氏だと言い触らしたりして―」
「ちょっと待て」
掌を前に出し、安藤の言葉をさえぎる。
…何か、聞き捨てなら無い言葉が聞こえたぞ今…。
「……彼女?」
「ああ。付き合って3年にもなる彼女がいるぞ」
あっさりと、そう言う安藤。
俺は眉間に深く皺を刻み込み、ため息をついた。
その横で、安藤が呆れた、とでもいうように肩をすくめて零す。
「…どうやら……ハメられたようだな?七澤」
―もう一度会うことがるなら、絶対にシバいてやる。
心の奥で、そう一人呟いた。