真夜中の向日葵
今、泣いている彼女を抱きしめて、言葉をかけるのは僕の役目なのに。
情けないことに、そんな彼女に僕の方が支えられている。
「永輝が何も言わずに姿を消したのは、永輝なりの優しさだったんだよ」
「……そんな優しさって、残酷だよ」
「人によって違うのよ」
その人なりの優しさ。
玲奈は僕に別れを切り出す直前まで、何の前兆も見せなかった。
永輝さんは曖昧な態度のまま、ある日突然、柚羽さんの前から姿を消した。
僕だったら、誰かと別れようと決めたら、それなりの素振りを見せるだろう。
そして、はっきりと相手に別れを告げるだろう。
そうすることが、僕は当たり前のことだと思っていたし、その人に対する気遣いでもあるんじゃないかと思っていた。
だけどそれは、その人によって違うんだ。
「もう、晶くんに会うこともないわね」