真夜中の向日葵

今、泣いている彼女を抱きしめて、言葉をかけるのは僕の役目なのに。

情けないことに、そんな彼女に僕の方が支えられている。



「永輝が何も言わずに姿を消したのは、永輝なりの優しさだったんだよ」

「……そんな優しさって、残酷だよ」

「人によって違うのよ」



その人なりの優しさ。

玲奈は僕に別れを切り出す直前まで、何の前兆も見せなかった。

永輝さんは曖昧な態度のまま、ある日突然、柚羽さんの前から姿を消した。


僕だったら、誰かと別れようと決めたら、それなりの素振りを見せるだろう。

そして、はっきりと相手に別れを告げるだろう。


そうすることが、僕は当たり前のことだと思っていたし、その人に対する気遣いでもあるんじゃないかと思っていた。


だけどそれは、その人によって違うんだ。



「もう、晶くんに会うこともないわね」

< 101 / 169 >

この作品をシェア

pagetop