真夜中の向日葵
柚羽さんは、指輪を胸のあたりで大切そうに握りしめた。
「……て言うかさ、遼太郎さん、変なこと言うんだよ。この指輪を柚羽さんの墓前に届けろとか……」
「えっ?」
「柚羽さんが死んだとか言うんだぜ?まったく、酷いよね」
「……あたしが、死んだ?」
僕がさんざん言われてきたことを柚羽さんに告げると、柚羽さんは呆然となった。
「いや、真に受けないでよ。冗談なんだって」
僕が笑いながら言っても、柚羽さんは考え込むような顔つきをした。
「……柚羽さん?」
黙り続ける柚羽さんの表情が、僕の不安をかきたてる。
柚羽さんはやっと口を開き、ぽつりと呟いた。
「……そうよ。……あたし、死んだんだった…」