真夜中の向日葵
第8章―太陽と向日葵―
・記憶・
僕と柚羽さんの間に沈黙が訪れる。
僕たちの耳には、周囲の喧騒が何一つとして入ってこなかった。
「柚羽さんまで何言ってんだよ」
僕は泣きそうな声で言う。
柚羽さんは僕の顔など見ずに、ただ記憶を辿っている。
「そうよ。あたし……死んだ」
「だからっ!そんな冗談……。だってオレ、柚羽さんちでコーヒー飲んだじゃん。隣の部屋の人は空室だって言ったけど、家具もちゃんと置いてあったじゃん!」
そうだよ。
柚羽さんの部屋は、誰かが住んでいる、そんな生活感がちゃんとあった。
キッチンでお湯も沸かした。
コーヒーを注ぐカップもあった。
永輝さんのための灰皿もあった……。