真夜中の向日葵

ベランダに降り込んでくる雨が、あたしの身体を容赦なく濡らす。

かんなさんの手前、懸命にこらえていた涙が一気に溢れ出した。


このまま、かんなさんの元に戻っても、たくさん泣いたことなんてバレない。

頬を濡らすのは、雨なのか涙なのか、あたしにでさえも見分けがつかない。



「………これ、永ちゃんが使ってたんでしょ?」



突然声をかけられて、あたしはドキッとした。

部屋にいたかんなさんが、裸足のまま、あたしのすぐ後ろに立っていた。

かんなさんの手には、さっきあたしが下げた灰皿が握られている。



「……なによ、こんなもの!」



かんなさんはそう言って、ベランダから灰皿を落とそうと手を振り上げた。



「やめてっ!」



灰皿に、永輝の姿が映る。

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