真夜中の向日葵


「じゃ、明日の夜10時な。親に何か聞かれたら、オレんちで受験勉強とでも言っとけ」



放課後、靴箱で幸喜はそう言うと先に帰って行った。

正門の所に1人の女の子が立っている。

幸喜の姿を見つけると、その子は嬉しそうに笑って手を振った。


幸喜は僕とは正反対で、今、幸せの絶頂にいる。

僕も、ついこの前まではあんなふうに正門の所で玲奈と待ち合わせていた。

玲奈もあんなふうに、嬉しそうに手を振ってくれた。



「おっ、晶じゃん。今帰りかー?」



幸喜と彼女の姿を食い入るように見ていた僕に、健二が声をかける。



「一緒に帰ろうぜ」



彼女のいない健二は、いつも男と一緒に帰る。

そんな彼を、僕も幸喜も「いいかげん彼女つくれよ」と冷やかしていた。

健二は女にモテるくせに、彼女をつくろうとしない。

色恋沙汰よりも、男と遊ぶほうが楽しいらしい。



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