真夜中の向日葵
小さな4階建てのアパートの前に差し掛かったとき、柚羽さんが荷台からひらりと飛び降りた。
僕は慌てて急ブレーキをかけた。
「自転車はここね」
そう言われて、僕はアパート入り口の駐輪場に自転車を止めた。
エレベーターのないアパート。
柚羽さんの部屋はそこの3階、一番端にあった。
「どうぞ」
カギを開けることなく、突然開かれるドアに僕は唖然とした。
「いや、ねぇ。て言うか、カギ……は?」
「……あたしのいない時に永輝が来ても大丈夫なように、かけていないんだ」
寂しく笑う柚羽さんに、僕の胸は痛む。
「泥棒に入られるよ」