真夜中の向日葵
「あたし、もう大丈夫だから。君は受験勉強に専念して?」
「柚羽さん、僕はっ……」
面倒だなんて思っていない。
そう言おうとした瞬間、柚羽さんがハッとした顔で立ち上がる。
「柚羽さん?」
「今、ドアをノックする音が……」
「えっ?オレには何も聞こえなかったけど…」
僕がそう言っても、柚羽さんは諦めようとしない。
「ううん、したよ。……きっと、永輝だよ」
「柚羽さん!」
玄関に向かおうとする柚羽さんの手を僕は強く引き止めた。
ノックする音なんてしていない。
しかも、永輝さんがこのドアをノックするなんて、あり得ない。
「離して!」