真夜中の向日葵

「あたし、もう大丈夫だから。君は受験勉強に専念して?」

「柚羽さん、僕はっ……」



面倒だなんて思っていない。

そう言おうとした瞬間、柚羽さんがハッとした顔で立ち上がる。



「柚羽さん?」

「今、ドアをノックする音が……」

「えっ?オレには何も聞こえなかったけど…」



僕がそう言っても、柚羽さんは諦めようとしない。



「ううん、したよ。……きっと、永輝だよ」

「柚羽さん!」



玄関に向かおうとする柚羽さんの手を僕は強く引き止めた。

ノックする音なんてしていない。

しかも、永輝さんがこのドアをノックするなんて、あり得ない。



「離して!」

< 84 / 169 >

この作品をシェア

pagetop