幸せの契約
寝室に戻る


疲れきった体は急速に睡魔に襲われた



ベッドに横になろうとしたとき


コンコン

ノックが響く


「犬居です。入ってもよろしいですか?」


その声に私の体はピンと糸で引っ張られたかのように起き上がった


「はい。
どうぞ…。」


ゆっくり呼吸を整える

「失礼いたします。
寝水とお薬をお持ちしました。」


犬居さんの右手に乗る丸いトレーには水差しとグラスと薬が置かれていた



「薬?」


なんで薬なんか飲むんだろう


「飲みすぎと、二日酔い防止の為のお薬です。」


そう言って枕元の丸テーブルにトレーごと乗せた

そこまで私の事考えてくれてたんだ

「ありがとうございます。」
薬を飲み終えて
犬居さんを見上げた


顔にかかるサラサラの黒髪
整った顔立ち


いつもの犬居さん

さっきの表情は何処にもない

「鈴様?私の顔に何か?」


不思議そうに犬居さんが私を見つめ返した


ドキンッ


恥ずかしくなって
とっさに目を伏せる


「いえ、別に…。」


私はそのまま黙り込んでしまう



二人っきりなんていつもの事なのに


どうしてだろう…

こんなにも
胸が苦しくて

恥ずかしくて


緊張する
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