幸せの契約

Trap

大学のカフェは私たちの溜まり場になっていた



汗をかいたアイスコーヒーを私はただ見つめている


「どうしたぁ?
鈴なんか元気なくない?」

静香が私を覗き込む


私の心はあの夜から止まっていた


「う―…ん。
なんか…恋愛って難しいなって思ってさ。」



「何々?あの執事と何かあったな?」



さらに食い付いてくる


静香に合コンの夜の事を話した


付け睫が一瞬カッと上下に散った


「なんだそれって!?
あり得なくない?たかが執事でしょう?!」


“たかが執事”


私にとって犬居さんはそんな簡単には片付けられない

「犬居さんの気持ちが分からないんだよね。

もしかしたら…って期待してる自分もいるけど、それが違ったときに凹みたくない自分もいて…。」


「凹みたくないって
あんたねぇ、恋愛って傷つかない様になんて出来ないんだよ?
みんな傷付いて、悩んで幸せ掴み取るの。
傷つきたくないなんて言ってるんじゃ恋愛なんてできないよ?」


そう言って静香は私のアイスコーヒーを飲み干した


「ちょっと!」


驚く私に静香はさらに言う

「これは恋愛講座の講習代です!」



もぅ


仕方なく私はまた同じものを注文するハメになった
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