幸せの契約
「いや、そうじゃなくて。
こんな大きなクリスマスツリーは初めて見たから…ビックリした。」



「今年は鈴ちゃんと過ごす初めてのクリスマスだから、本当はもっと盛大にやりたかったんだがね。」


“鈴ちゃん”??


この屋敷に私をそんなふうに呼ぶ人いた?


振り返ると
蔵之助さんが立っていた


「蔵之助さん!?」


「お邪魔しますよ。」

ニコと微笑む蔵之助さんの前に犬居さん、由香ちゃんが頭を下げる


「いらっしゃいませ、旦那様。お迎えもせず申し訳ありません。」


「いらっしゃいませ。お久しぶりにお目にかかります。」


「犬居、気にするな。
田中、久しぶりですね。鈴ちゃんと仲良くしてるかい?」


蔵之助さんに話しかけられて由香ちゃんがカチコチに緊張してるのがわかる

「は、はい。鈴様には何かとお心遣いをいただいて、精一杯使えさせていただいております。」


「それは何より。
しかし、思ったよりもツリーは小さかったな。」


まじまじそびえ立つもみの木を見て“小さい”と不満げな声


「旦那様、これ以上の大きさでは屋敷に入りませぬ。」

芳賀さんが横から助言する

「そうか…。」

渋々納得する蔵之助さん

なんだか
話についていけない


「旦那様、鈴様。
こちらは冷えますのでどうぞ応接室へ。」


犬居さんが応接室のドアを開けた


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