幸せの契約
バスタブにたまった豊かなお湯に体を沈める


田中さんが入れてくれた
アロマオイルの香りが心地いい



自分の家にお風呂があるなんて…


今まで住んでいたのは
古い四畳半のアパート
トイレは共同で
唯一の簡易シャワーが男女共同で鍵無し…


我ながらよくあんなところに住んでいたと思うよ


でも
仕方なかった…

あの人たちの元を
里親の元を離れられるなら

どんな生活でも我慢できた……―


「…さま?
鈴様?」

田中さんの声に現実に戻る
バスルームの外から田中さんが不安げに声をかけていた

「先程から、何やらおっしゃっておりましたが、大丈夫ですか?」




「大丈夫です。
ありがとうございます。」


田中さんの安堵のため息が聞こえる



私なんか心配しなくてもいいのに…

どうして
私なんかに仕えてくれるんだろう


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