幸せの契約
見ず知らずの
ただの18歳の女に…


「ねぇ田中さん?」


「はい。何でしょうか?」


気持ちのいい返事が返ってくる


「犬居さんも、田中さんもどうして、私なんかに仕えてくれるの?

蔵之助さんの命令だから?」


私の質問に戸惑っているのか微かに間ができる


「私たち使用人は厳しい下積み時代を何年も過ごしてきました。初めから、メイドやボーイとして主人に仕えることが出来る訳ではないのです。

私もメイドになるのに3年かかりました。そして初めてお仕えするのが鈴様です。私の主人は旦那様ではなく鈴様です。

鈴様が快適な暮らしを送れるように精一杯仕えます。それが私の役目であり、鈴様の幸せが、私の幸せなのです。」



聞いていて
申し訳なくなった


そんな風に思われるほど
私は偉くない


< 32 / 214 >

この作品をシェア

pagetop