幸せの契約
「鈴様?
お渡しが遅くなりましたが、これを…。」



犬居さんが私に差し出したのは厚みのある

有名ブランドの長財布とお揃いのコインケース



手に取るとずっしりとした重みがある



「これは…?」


「鈴様の新しいお財布にございます。こちらのお金は鈴様の自由に使ってください。旦那様からの贈り物にございます。」


新しい財布?

私のバッグの中には
セールで買ったヨレヨレの折りたたみ財布が入っている


中身は微々たるもので
銀行の残高も何桁あるか



「でも、私は財布あるし。自分のお小遣いだって自分で働きます。」


「鈴様。
鈴様のお財布は旦那様とのお約束の間はお使いになりませんようお願い致します。

私は毎月そちらのお財布に旦那様から言いつけられました、決まった金額をお入れします。
もし、減っていなかったら、旦那様になんて申し上げればよいのか…。

旦那様の御気持ちを踏みにじるようなことはできません。


ですから、どうか、そちらのお金は鈴様の好きにお使いくださいますよう、深くお願い致します。」



膝に頭を擦り付けるくらい深く下げる犬居さん



その姿を見たら
これ以上
言えないよ


「わかりました。」


渋々私は納得した
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