灰色のセカイ
7時過ぎ
いつもならアパートに帰って一息ついて病院に行くけど一ノ助さんがいたから今日はそのまま病院へ行った
「あら、今日は早いわね。一ノ助さんと一緒だったの?」
一ノ助さんはこの病院で知らない人はいない
元医師だったらしいけどヤブ医者みたいでそれからホームレス生活してるらしい
その一ノ助は病院の外で別れた
いつものようにいつもの病室へ看護婦さんに案内してもらうと
美咲の病室から知ってる顔の看護婦が出てきた
「おっ、一ノ瀬じゃん。久しぶり」
ぼくや美咲の幼馴染みの尾野椈里(コクリ)だった
美人看護婦でこの病院の人気者だ
「尾野さん、後は任せていいですか?」
「ええ、いいですよ」
美咲の病室へ入り
いつものように毛布の上に置かれている細い手を握る
涙が出る
細くなった白い指を両手で握りしめ
子供のように泣いてしまう
声のない叫びを横で苦しそうに見ている尾野がいた