灰色のセカイ
屋上へ尾野とたばこを吸いに出た
とは言ってもぼくはたばこを吸わない
尾野に連れられ来た
あまりにも明るいその世界にぼくは驚いた
東京や大阪みたいな所だけじゃなくこんな所も明るくなってしまったことに怖くなった
いつか星が見えなくなるくらいの明るい夜が訪れたら大好きなお休み時間がなくなってしまいそうで
ぼくは星を見ながらじゃないと眠れないのだ。まあ、いっか
ぼくは長椅子に腰を下ろし
尾野は手摺に肘を置きセブンスターを吸っていた
吸わないからオイシイのかな
なんて考えてた
「いつも聞かされてるよ。お前が毎晩美咲の所に行っては手を握って泣いてる、て」
「これはお恥ずかしい」
恥ずかしそうな顔もせずにそう言ってみた
「いつまでお前の涙は美咲のものなんだ?」
スルーされた
尾野はたばこを吹かした
夜に現れる白い煙とナース服を着た尾野には
カッコいい
という言葉が似合ってた
「もういいだろう
美咲がいつ目覚めるか分からない
だからってお前まで一人になる必要はない
お前は……」
言い続けたい言葉を口で止どめ
たばこの煙と共に吐き捨てた