灰色のセカイ
猫と一ノ助さん
ニャー
病院から出ると
9時だった
病院の前に白猫がいる
全身真っ白な猫はいつもここで
ゴロゴロしてる
呑気だねーと思いながらも猫の横に腰を下ろす
「よっ、真くん」
白猫の後ろから
ヒゲを剃らず風呂も入っていない少し小汚ないオッサンが現れた
俗に言うホームレスというやつだ
オッサンの名前は
宮川一ノ助
昔くさい名前だが一ノ助さんはぼくの1つだけ年上だ
「悪いね、猫が来ちゃて
ついでで悪いんだけど食べ物持ってる?」
狙いはそっちかよ!
とか、思いながらカバンの中から残っていたカロリーメイトを渡した
ありがと、ていった瞬間、奪い取るようにしてカロリーメイトを取った
大事そうにポケットにしまった
食べないのかよ
と心の中でツッコミをいれ
早々に立ち去ろうと
心掛け、立ち上がろうとしたら一ノ助さんが話してきた
「あれ、帰ちゃうの」
「明日も仕事ですからね」
「大変だね、社会人は」
白猫の体を撫でながら一ノ助は言った
「じゃあ、帰りながら空を見て行くといい、明日は雨だ」