職場内恋愛
『悩みという悩みじゃないんですけど…
なんか俺、意気地なしみたいで。
どうしてもあと1歩が踏み出せなくて…』
言葉が続かない。
なんて言っていいか分からなかった。
『そんなこと言ったら俺だってそうですよ。
俺も意気地なしですもん。
それもかなりの。
と、いうか藤堂先生は俺がどれだけ意気地なしか知ってるじゃないですか。
ただ俺は藤堂先生に言われてなんとか踏み出せました。
俺は藤堂先生みたいに立派じゃないから、なんて言っていいか分からないですけど…
でも、後悔するんじゃないですか?
今、それをやらなかったら後悔…しませんか?
後悔するのと、勇気を出すの。
どっちが簡単か。どっちが楽か。
それは考えるまでもなく…分かりますよね?』
部屋の前に着き、楠木先生が鍵穴に鍵をさした。
『あの、ちょっと行ってきます』
そう俺が言うと楠木先生は笑って頷いた。
そして俺はロビーへ向かう。
今もまだ、ロビーに奈々が…いる気がするんだ。