職場内恋愛






「美優さんの話、してくれて嬉しかったです。

けど、それと同時に悲しかったです。


気づいてしまったから。

あなたの心の中に、美優さんの存在がまだ…あることに。」


ズキッと胸が痛んだ。



「最初は、心の底から美優さんのためにも幸せにならなくちゃいけない、そう思いました。

でも、優作さんと一緒にいるとどうしても美優さんのことが頭に浮かんじゃうんです。


優作さんの笑顔、美優さんにも向けられてたんだろうな、って。

その美優さんは記憶がなくてまだ苦しんでるのに私は幸せになっていいのかな、って。


そう思うとだんだん、辛くなって。

初めは幸せだったのに、最後は辛さに負けて。


優作さんと一緒にいるのが何よりも、辛かった。」


奈々の目から一粒の涙が零れた。



「好きなのに。

好きなのに。

好きなはずなのに、って何回も思いました。


でも、そう思えば思うほど、辛くなった。


だから…別れよう、って思ったんです。



今のまま一緒にいても優作さんを傷つけるだけだ、って。

そう、思ったんです…」


奈々が服の袖をギュッと握ったのが見えた。








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